認知症の発症や進行を遅らせるために
アルツハイマー型認知症は発症したら根治治療は不可能とされていて、進行スピードをできるだけ遅くする治療によってクオリティ・オブ・ライフを長期間維持することが治療目的となります。ただし、アルツハイマー型認知症には発症前の段階として軽度認知障害(MCI)があります。
軽度認知障害(MCI)の段階で適切な治療を行うことで、アルツハイマー型認知症の発症を遅くできる可能性があります。早期に治療して発症・進行を遅くできれば、快適な生活をより長く維持できます。認知症は誰もがなる可能性のある病気ですから、早期発見のために軽度認知障害(MCI)の正しい知識を得ておくことはとても重要です。
軽度認知障害(MCI Mild Cognitive Impairment)とは
高齢化にともなって認知症がメディアで取り上げられることが増え、認知症にもさまざまなタイプがあり、早期発見が重要だということはある程度知られるようになってきました。それでもまた、最も効果的な早期発見につながる軽度認知障害(MCI)は知っている方がかなり少ないのが現状です。
軽度認知障害(MCI)は認知症を発症する前の状態であり、正常な状態と認知症の間の段階で、放置していればいずれ進行して認知症を発症すると考えられます。アルツハイマー型認知症だけでなく、認知機能障害を起こすさまざまな疾患にも軽度認知障害(MCI)がありますが、ここでは最も多いアルツハイマー型認知症の軽度認知障害(MCI)についてご説明します。
アルツハイマー型認知症の軽度認知障害(MCI)では、すでに脳内に異常なタンパク質であるアミロイドβの蓄積が認められ、認知障害として軽いもの忘れの症状を起こすことがありますが、日常生活で周囲に影響を及ぼすような支障を起こさない程度とされています。
アルツハイマー型認知症の軽度認知障害(MCI)の定義
- 記憶障害の症状を本人や家族が気付いている
- 記憶や見当識などの認知機能で、客観的に見ても1つ以上の障害が認められる
- 日常生活動作は正常に行うことができる
- 認知症とは診断できない状態
患者数が増加傾向にあります
厚生労働省は、65歳以上の高齢者の認知症患者数を約462万人、軽度認知障害(MCI)のある方は約400万人と2012年に報告しています。高齢者全体の4分の1が認知症やその予備群の軽度認知障害(MCI)ということです。そして認知症の中で最も多いアルツハイマー型認知症は全体の5~7割を占めると考えられています。アルツハイマー型認知症とその軽度認知障害(MCI)は年齢を重ねれば誰もがかかる病気であり、健康寿命を守るためにも、クオリティ・オブ・ライフを維持するためにも早期発見が重要なのです。
アルツハイマー病の前段階である軽度認知障害(MCI)の症状
- 軽い記憶障害が主な症状であり、下記のような症状を起こすことがあります。
- 同じことを何度も聞く
- 最近の重大なニュースのことをよく覚えていない
- 昔の旅行については細部を覚えているのに、最近の旅行は細部を覚えていない
- 少し前にあった特別なこともあいまいにしか覚えていない
アルツハイマー型認知症とその前段階である軽度認知障害(MCI)の違い
軽度認知障害(MCI)の段階では1人でも自律した生活を送れますが、アルツハイマー型認知症では困難です。
アルツハイマー型認知症は、生活する上で行う動作ADL(Activities of Daily Living)にも障害を起こす病気です。ADLは、必要最低限である食事・トイレ・入浴・着替えなどの基本的ADL、少し複雑な動作である買い物・家事・お金の管理など手段的ADLに分けられますが、アルツハイマー型認知症では基本的にADLと手段的ADLのどちらも困難になります。一方、前段階である軽度認知障害(MCI)では、基本的ADLには問題がなく、手段的ADLに多少の影響を与えますが、介護や介助がなくても日常生活に支障を及ぼさない程度にとどまります。
アルツハイマー型認知症は発症してしまえば治療をして進行をゆっくりさせることができますが、止めることはできません。前段階の軽度認知障害(MCI)では、適切な治療によってアルツハイマー型認知症の発症を遅らせることができる可能性があります。アルツハイマー型認知症の軽度認知障害(MCI)は近年研究が進んでいて、食事、運動、心理療法やトレーニング、薬物療法など有効な治療・改善方法が次々に発見されています。
当院では長く専門的な臨床に携わってきた院長が、認知症や軽度認知障害(MCI)の治療、予防医学に力を入れた診療を行っています。「もしかしたら」と感じたら、お気軽にご相談ください。
早期発見のために
アルツハイマー型認知症の軽度認知障害(MCI)は、数年でアルツハイマー型認知症に移行すると考えられていますので、ちょっとした些細な症状に気付いた段階で専門医を受診することが重要です。
アルツハイマー型認知症の原因と考えられている異常なタンパク質のアミロイドβの蓄積は発症の20年も前からはじまっているとされていて、軽度認知障害(MCI)でも脳内にアミロイドβの蓄積が進んでいると考えられています。発症までの時間には個人差が大きいため、軽度の症状に気付いた時点で適切な治療を受けることで効果的に発症を遅くできる可能性が高くなります。まや、早期であればあるほど高い効果を期待できます。
念のためという受診で早期発見につながることもありますし、発見できなかった場合も効果的な予防方法をお伝えできます。気を付けるべき症状についてもご説明しています。安心して暮らしていくために、できるだけ早めの受診をおすすめしています。